日本の少子化対策は、待ったなしの大問題である。
実に40年以上にわたって人口が減り続けている。去年は初めて出生数が80万人を割り込む見通しで、国の予測より8年も早いペースで少子化が進んでいる。
このブログでも少子化問題については11月16日に取り上げている。今のペースで進むと2100年には日本の人口は5971万人になると予測されている。
また、このことで生じる問題点を総務省のホームページで確認することができる。「経済規模の縮小」「労働力不足」「我が国の投資先としての魅力低下による国際競争力の低下」「社会保障制度の給付と負担のバランスの崩壊」「財政の危機」「基礎的自治体の担い手の減少に伴う社会的・無経済的課題の深刻化」。まさに国が萎んでいくかのような未来予測である。
この少子化問題について、キャスターの辛坊治郎氏が5日、ラジオ番組「辛坊治郎ズーム そこまで言うか!」で、先日、岸田総理が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策として発言した3つの政策(児童手当など経済的支援の強化・子育てサービスの強化・働き方改革の推進など」)に対し、「ちょっと曖昧」「抽象的」と指摘した。
辛坊氏はこの番組内で、少子化対策としてフランスが取り組み成功した例を取り上げた。それは『税制のN分N乗方式』といもの。氏は、「この方式だと子供を持とうというモチベーションが極めて上がる」という。
この「N分N乗方式」について調べてみた。
この方式は、個人ではなく家族全員の所得から世帯の課税額を算出する方式で、子供の多い世帯ほど所得税が軽減されるという。フランスで取り入られている仕組みでもある。
『N分N乗方式は、夫婦や子供などの世帯を構成する家族全員の収入を合算し、その人数で割った金額を一人当たりの収入とみなして各種控除を適用する。そして一人当たりの納税額を計算し、その納税額に世帯の人数をかけたものが世帯の納税額として、最終的に課税される仕組み』とある。
この方式は、所得のない子供が多い大家族ほど納税額が低く抑えられることになる。これに対し日本で採用されている所得税の課税方式は、個人を対象としているため、所得のない子供の分は両親の所得から扶養控除として税額を引き下げる効果しかない。
もう少し具体的にみてみたい。
まずは現在の所得税計算式は以下の通りである。(国税庁ホームページ)
課税される所得金額 / 税率 / 控除額
195万円以下 / 5% / 0円
195万円を超330万円以下 / 10% / 97500円
330万円を超695万円以下 / 20% / 427500円
695万円を超900万円以下 / 23% / 636000円
900万円を超1,800万円以下 /33% / 1536000円
1,800万円を超4,000万円以下 / 40% / 2796000円
4,000万円超 / 45% / 4796000円
これを基に現在の仕組みとN分N乗方式を「課税所得1000万円」で比較すると以下のとおり納税額は大きく違ってくる。
課税所得が1000万の場合
【現在】
1000万×0.33(33%)=330万 (扶養・控除制度は計算外)
【N分N乗(世帯課税)方式】(4人家族)
1000万÷4(N分)=250万
250万×0.10(税率10%)=25万
25万×4(N乗)=100万 (扶養・控除制度は計算外)
現在は、所得金額が多ければそれだけ税率が高くなる。しかし「N分N乗(世帯課税)方式」では、課税対象の所得額が所得÷家族の人数になり、家族が増えれば増えるほど税金の軽減につながる。このことが少子化対策に有効と言われる理由である。
東京都は、4日に少子化対策として、都内の0~18歳を対象に1人当たり月5000円程度を給付すると発表した。少子化対策は国政レベルで取り組む問題であると思う。自治体がリードしていくのもいいかもしれないが、自主財源の多少で支援策に差があることはどうなのだろうか。問題の根本的な解決にはならないように思う。
「このN分N乗方式」方式、面白いと思う。これまでにも政府内で論議されていたようであるが現在は立ち消えとなっているのであろうか、この言葉を全く聞くことがないように思う。
ブログの冒頭に書いた辛坊氏の「この方式だと子供を持とうというモチベーションが極めて上がる」という言葉。
この「モチベーションが極めて上がる」という言葉こそ、まさしくこの問題を解くキーワードだと思う。