厚生労働省が公表した「2020年市区町村別生命表」がwebニュースで発表されていた。
これによると長寿トップは、『男女とも川崎市麻生区 男性84・0歳・女性平均89.2歳』とある。正直驚いてしまった。長寿国日本ではあるが、自治体の平均寿命が、女性のみではあるがなんと89.2歳なのである。
長寿の順に並べてみると、(※小数点第2位を四捨五入しており、年齢が同じでも同じ順位ではない)
(女性)
3位 長野県高森町 89・0歳、
5位 兵庫県芦屋市 88・9歳
(男性)
3位 長野県宮田村 83・4歳
4位 愛知県日進市 83・4歳
人生100年時代を実感する。
さて、実は、この川崎市麻生区は、今年の年明けに10日ほどの東京滞在の際拠点となった街である。新宿発で始まる小田急線の「新百合ヶ丘駅」を利用した。この駅の次に特急が止まるのは町田駅。つまり川崎市麻生区は、海沿いからは随分奥にあることになる。かつ町田市の近くに位置するという不思議さ。更には、川崎市に抱く「工業地帯」という印象。治安も良くないというイメージがある。しかし「長寿」でもこうして名前が出てくる。
俄然、『川崎市』に興味が出てきた。
まず地形である。地図を見て驚いた。東京都と横浜市に挟まれた場所に、区を1つずつ横に並べていったような感じで市はある。南北(東西?)に細長い市である。一般的には、『川崎区=川崎市』のイメージではないだろうか。
川崎市についていろいろ調べていく内に、「(川崎市の)南北問題」という言葉を知った。右端にある川崎区と左端にある麻生区では、様々な違いがあるようである。「平均寿命」「所得」「教育」「治安」等。
所得面で見ると、2022年の川崎市の生活保護率は1.89%(全国平均※2021年1.63%)。多摩、麻生、宮前、中原、高津の北部5区が平均1.34%なのに対し、川崎区は3倍の4.1%。
平均世帯年収は、麻生区が633万円なのに対して、川崎区は517万円。世帯年収1000万円以上の富裕層の割合は麻生区15.2%、川崎区7.0%。全国平均の年収1000万円以上の世帯割合は全国平均12.7%となっている。同じ自治体にありながら大きな格差が生じており、川崎市はこのことについて様々な対策を打ってきたようである。
取り組みの結果、治安については大きく改善されていっているようである。以前は川崎区の犯罪発生率は高かったものの、現在では麻生区とあまり変わらないほどになっている。
『格差ではなく「多様性」、変貌を遂げる川崎区』とのタイトルの配信記事を見つけた。
“川崎区は大きな変貌を遂げつつある”、の書き出しで始まる。
『川崎市とりわけ川崎区のイメージとして根強い、ギャンブル、風俗、工場を、南北の「多様性」と捉えなおして変革に取り組む活動が盛ん。風俗街のピンクなイメージはセクシーに、競馬場のギャンブル臭さは明るいエンタメに、工場のイメージは工場夜景で美しく、外国人居住者の多さは多文化共生の拠点に……といった具合。』
「川崎市 南北問題」で検索すると様々な配信記事を見つけることができる。
この中に、東洋経済onlineが配信している『この国の未来は「川崎市」に凝縮されている』のタイトルの記事がある。
90歳近くの平均寿命の自治体の存在に驚いた記事の書き出しから、全く異なる文章展開になってしまった。知らないことがあまりにも多いことを改めて痛感する。
日本は広く、そして長く複雑な歴史を持ち、たくさんの人が生きている国である。風土、文化、歴史。それらが重なり合いながら、今に至っている。
今、社会はさまざまな進歩に伴い、イノベーションという言葉に表されるように、大きく変容している。
日本人でありながら、日本のことをあまりにも知らなすぎることを思う。知ることには限りがあると思うが、とにかく見て回りたいという思いが、今、強烈に強くなっている。