Netflixで配信されている連続ドラマ『地獄に落ちるわよ』、全9話を見た。平成の初め頃だろうか、毎日のようにテレビに出ていたような記憶のある「占い師 細木数子」の生涯を描いたドラマである。

もうずいぶん前のことである。当時は日々慌ただしくしていたこともあり、毎日じっくりとテレビを見ていたというわけでもない。ただ見れば、“ふくよかなおばさんがえらいはっきりズケズケもの言うなぁ”という印象が強烈に残っている。確かに、今思えば『怪しげ』という形容詞がついてもおかしくなかったなぁとも思う。
その細木数子の幼年期の時代からドラマは始まる。時は、戦後の混乱期。極貧の家庭。そして騙し騙されてのさまざまな体験の中で、後の歪んだ価値観が芽生えていったのだと感じた。才覚の芽は小さい時からあったのだと思う。高校を中退して、銀座のクラブに勤めだし、二十歳で銀座にクラブをオープンさせる。その後も、次々にクラブをオープンさせていく。時代の潮目の変化を敏感に察し、ディスコの経営にも手を広げていった。
その後、当時の紅白歌手「島倉千代子」に巧みに取り入っていき、後見人となり、島倉千代子の稼ぎで莫大な利益を上げていく。
人生の後半は、占い師としてさらに名を上げていき、独自の研究で編み出したといわれる「六星占術」に関する本を出版し、大ベストセラーとなる。高い知名度と独自のキャラクターで後にテレビの人となっていく。
それにしても、とにかく凄まじい半生である。ドラマを見つつこの人への興味が強烈に湧く。更には、どこまでが実話でどこが脚色かなどの疑問も湧いてくる。調べてみると、「細木数子の実在の半生をベースにした、“事実に基づくフィクション”であり、完全な実話ではない」とある。そうなると“どこが事実なのか”が気になってくる。
【実話に近いとされる部分】
・戦後の貧困から夜の街でのし上がり、「銀座の女王」と呼ばれるまでの成功する流れ。
・独自の占いで、テレビ出演や出版で巨大な影響力を持ったこと。
・強い言葉で人々の不安を突き、カリスマ的存在になったと言う評価。
【フィクション色が強いとされる部分】
・会話の細部、心理描写、時間の飛ばし方、場面転換などはドラマ用に再構成。
・一部の登場人物、象徴的なシーンは、モデルはあっても創作要素が大きいと解説されている。
・物語としてのテーマ性「怪物」は、製作者の視点が強く反映されている。
こうなると、細木数子自身の人物像はどうなのかが気になり出す。早速調べてみる。生誕は1938年4月4日。死没は2021年11月8日。83年の生涯。Wikipediaでは、【生い立ち】、【銀座の女として】、【占い師として】、【テレビ出演】、【テレビ出演引退後】の5つの項により説明されている。ここにあることとドラマで表現されていることを重ね合わせ見ていくと、さらにドラマのリアリティが増していく。冷静さを持ちつつ見ても、改めて細木数子という女性の凄まじさを感じさせられる。あの戦後の混乱期に、極貧の中から若くして銀座の女王になったことも驚かされる。そして驚いたのは陽明学者の安岡正篤と知り合い、結婚の約束を取り交わす部分は、驚愕という言葉をも使いたくなってしまう。ついでにこの「安岡正篤」という人物、死去に伴う葬儀委員長は「岸信介」、葬儀への出会者には、中曽根康弘、田中角栄、福田赳夫、鈴木善幸らが参列したと言う。「保守派の長老として戦前から戦後に亘って活躍し、吉田茂などの大物政治家とも深い交流があったとされる。」とのこと。この人物と、婚姻関係を結ぶに至った事実には、細木数子の人物像に更なるミステリアスさが増していく。
細木数子という人物の生涯を見た時、「女」の部分を最大限に利用したことを感じる。となれば気になるのは、若い頃の容姿に関心は向かう。調べてみたら、規模とレベルはわからないが、「ミス渋谷」に選ばれた事実があるようである。
しかし、思う。なぜ今、この「細木数子」だったのかと。「闇」の部分を感じつつも最大限視聴率のために利用し、亡くなった後、今度は「闇」の部分にスポットを当てのドラマ化。
とにかく、ドラマを見終えて、いろいろなことを考えさせられてしまった。
ちなみに、この『地獄におちるわよ』は、世界7カ国でトップ10入りをし、非英語ドラマシリーズで週間ランキング世界4位に入ったとのこと。これまた“凄い”の一言である。