先日、ジェトロ宮崎主催の講演会に参加した。
テーマは、『経験者が語る「海外輸出“失敗”ストーリー」』、副題に「いかに克服し、海外売り上げを増大させたか」とある。
講師は、宮崎県高千穂町にある『株式会社杉本商店』代表の杉本和英氏。同社の事業内容は、乾しいたけ製造卸売とある。
生産農家から持ち込まれた椎茸を全て買い取り、販売していくという商いを5代に渡って展開してきたが、今後の事業の展望を見た時、人口が今後減少していく日本市場の先細りの中では、積極的な展望は望めないという判断の中で、活路を海外に求めていったということであった。
講演会の紹介をいただいた時、ジェトロ担当者から、『この杉本社長、「貿易」については、全くの初心者からのスタートであり、更には海外であまり馴染みのない乾しいたけの輸出は、かなりの難しさがあった。しかし、苦難を乗り越え成功にたどり着いた実践は、同じように貿易を志している方々にとっては絶好の学びの機会になると思う。』とのお話を伺い、是非とも参加したいと考え、今回の機会につながっていった。
今回の講演会は、直接参加とリモート参加の2つの参加方法があり、この2つを合わせると100名を超える参加者があったとのこと。会場には50人程いたであろうか。結構若い人も多く、今後のビジネス展開を懸命に考えている方々であり、会場からの熱気を感じた。
「なるほど!!」と感じたところを整理してみたい。
○市場を、乾しいたけの喫食文化があると東南アジアに求めたが、既に日本より安い価格帯で市場が出来上がっていた。
○ならば喫食文化がないと思われるところを開拓していこうと考えた。そこでヨーロッパの視察を実施。
○行くことでわかる事実。喫食文化がないわけではなく商品は問屋にはあるしインターネットでも商品が売られている。しかし一般的な売り場はないということがわかる。売り方の変更。対面ではなく、先ずはインターネットで販売していこうとする戦略に変更。海外アマゾン店舗。
○次に市場(売り場)の創出に取り組む。展示会(見本市)への参加。魅力的な商品づくりのためパッケージに力点を置いた商品づくりを進めたが、購入者が求めていたのはそこではなかった事実の判明。
○展示会(見本市)で、乾しいたけの生産に関わる人々の姿や乾しいたけが栽培される高千穂の風土を写したプロモーションビデオが大きな反響を呼んだ。「本当の価値は産地(ここ)にあった」。
○映像には、生産に関わる人々の笑顔や想いを伝えるメッセージとともに、山深い高千穂の自然の中で息づく椎茸の瑞々しさが描かれている。
○売り手は、とかく商品そのものの魅力を伝えることに力点を置きがちだが、商品の持つストーリー性に、人は大きく魅了されるということに気付かされた。
杉本社長は言う。3年ほどは、どこに行けばいいのか、どこに売ればいいのか分からなかった。しかし今思うことは、「買い手を探すこと」より、「理解してくれる仲間を探す」こと。
そしてSNSを上手に利用すること。いいものはお客が拡散してくれる。
株式会社杉本商店は、売上高4億円。アメリカ・イギリス・イタリア・フランス・スペイン・ドイツ・シンガポール各国との取引をおこなっていると配付された資料には記載されている。
現在、貿易実務を学び、貿易事業の展開を志向している。
今回の講演では、具体的な方法論ではなく、まさしく「貿易」というものへの考え方を教えていただいたように思う。
経験を通しての気づきは貴重である。そして、会場に来ていた多くの人たちの姿にも刺激と勇気をいただいた思いである。